いぼ地蔵さん
場所:田高根
昔々、のっぽでとても意地の悪い男の子がいました。
死んだ蛇を竹の棒に挟んで女の子を追いかけ回したりするので、しまいには誰も遊んでくれなくなりました。
一人で遊んでいては退屈でしかたありません。
ある日、縁台に座ってふと自分の足を見ると、大きなイボが膝の上に出来ています。
男の子はそのイボを「一つ、二つ」と声をあげて数えました。すると不思議なことに、明くる日には、イボは四つに増えていました。
男の子はびっくりして、またそのイボを数えました。すると次の日には、八つに増えていました。
どうやら、イボは数えた分だけ増えるようです。体中イボだらけになってしまいました。
男の子のおばあさんが、昔からイボ取りに効くと言われている桐の木の葉の絞り汁をつけてくれたり、
牛の尻尾の毛でイボを縛ったりしてくれましたが、いっこうに効き目がありません。
男の子は、イボの出来ていない人を見つけると、すぐ大声で「一つ、二つ」とやるものですから、
男の子が来ると、みんな逃げ出してしまいます。
ある日男の子は、薬売りのおじいさんから、いいことを聞きました。
「自分のイボに触った後、その手をほかの人の体につけながら、イボイボ移れと言うと、そのイボがほかの人に移ってしまうそうな。」
さあ、それからが大変です。イボの出来ていない子どもがいると追っかけていき「イボイボ移れ」と大声でやるものですから、
村中の子どもがイボだらけになってしまいました。それでも、男の子のイボは半分もなくなっていません。
男の子は、イボを移す相手がいなくなったので困ってしまいました。
仕方がないので、退屈紛れに、家の近くのお地蔵さんに「イボイボ移れ」と言いました。
すると不思議なことに、相手がお地蔵さんでもイボが移ってしまうようです。
男の子は、体中のイボを全部お地蔵さんに移してしまいました。
石のお地蔵さんにイボが出来るはずもありませんが、とにかく、男の子のイボは全部なくなったのです。
男の子はとても喜んで、このことを村の子どもに教えました。子どもたちのイボがなくなったことは言うまでもありません。
それから男の子は、とても親切でみんなに好かれる子どもになったということです。
そして、このお地蔵さんのことを「いぼ地蔵さん」と呼ぶようになりました。

